2018年 10月 07日 ( 1 )

五十嵐威暢さんエッセイ『はじまりは、いつも楽しい」ご紹介

10/7日曜。

長文ですが、これを読めばすべてがわかる!
五十嵐さん語り下ろしエッセイのお話です。



昨日から札幌芸術の森で開かれている
彫刻家 五十嵐 威暢(いがらし・たけのぶ)さんの
展覧会「五十嵐威暢の世界」

本展は、五十嵐さんの長いキャリアのなかでも
日本の公立美術館で初の展示となります。
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2019年10月5日に行われた内覧会に先立つ式典。

五十嵐さんは今回10点もの新作を作られ、
うち1点「こもれび」を札幌市に贈呈しました。

上の画像は、
札幌市副市長から感謝状が贈られたところ。

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「こもれび」シリーズは、五十嵐さんが拠点を
アメリカから日本に戻すと決め、
三浦半島の秋谷に暮らしていたときに出来た作品。

普段は合板をカットアウトして作られますが、
こちらは鉄製。

これまでに作ったこもれびの模様を、
鉄に転写して切り抜くという
非常に高い技術で実現されたものです。

不思議な魅力をたたえる「こもれび」。
どこにも直線がない、
まさに手でしか生まれえない曲線。
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五十嵐さんの作品は、
MOMA(ニューヨーク近代美術館)の
パーマネントコレクションに
加えられていることからもわかるとおり

その評価は、世界も認めるところ。


20代で留学・自立し、
以来、グラフィックデザイナーとして
大企業から引っ張りだこだったキャリアさえも
ご自分で「デザイン」し、
50歳を機に渡米。

彫刻家の道を歩き始めました。

すべてを貫く思いは
「暮らしの美を高めること」。

ご挨拶でも、そうおっしゃっていました。
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内覧会後、同日の夜に開かれた
展覧会のオープニングを祝うパーティーにも
200人近くの五十嵐ファンが集い、大盛況!

遠くはインドネシアから
このパーティーのためだけに来道した
デザイナーさんもいらっしゃいました。


実は、このパーティーを目がけて
制作していた、もうひとつの五十嵐作品。

それが、こちら!
五十嵐さん語り下ろしのエッセイ
『はじまりは、いつも楽しい』なのであります。
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感謝の気持ちをこめて
パーティーの招待客の皆様に
お持ち帰りいただいたのは、
五十嵐さんのサイン入りカードと本書を1冊。


不肖佐藤は、その構成と執筆、編集を
お手伝いさせていただきました。

昨年7月から五十嵐さんに取材すること5、6回。
(校正をいれると、もっとかな)

毎回2〜3時間近くのインタビューを繰り返し、
同時にお話を補強する資料を集め、
構成を組み立てていきました。

本当はもっと早くできそうだったんですが
途中、私の都合でお休みをいただきまして!(焦)

停滞気味だった流れが一気に動き出したのは、
今年の夏。

本をまるごとデザインしてくれる
デザイナーさんが

元イガラシステュディオのスタッフ、
森治樹さんに決まったときから
具体的なスケジュールが確定し、
走り出しました!

森デザイン株式会社
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上の二冊、よく見ると、
帯のイラストが違うのがわかりますか?

これは、五十嵐さんが札幌の大通ビッセに
作品『Sky dancing』を納品後、
関係者に進呈した小型の模型(マケット)を
思い出しながらスケッチしておいたもの。

制作にあたり、事前にスケッチを描いたりしない
五十嵐さんですので、
作品を納品した「あと」に描かれた
とても貴重なスケッチです。

右はパーティーの招待客用(私の分です笑)。

これと、もうひとつ(下の画像)
すなわち二種類のデザインがあり
どちらが当たるかは、中をあけてのお楽しみ!
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そして先ほどの二冊のうち、左側は、

Amazonや書店で
皆様にお買い上げいただけるバージョンとなります。
(私は勝手に
「葉っぱバージョン」と呼んでいます)


しかも、楽しい「遊び」は
これだけではありません!

帯を取ると、表紙カバーにも
「四つめ」のイラストが現れ、
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表紙をめくった扉にも、ほら、
「五つめ」のイラストが!
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五十嵐さんはお名前に「五」がありますので、
おかけになっているメガネの
レンズの直径もジャスト五十ミリ。

このエッセイ本プロジェクトでも、
全体を見渡すと
五つのイラストを使っているという、
お茶目な遊び心が潜んでいたのです。


ああーーーー、これを言えてスッキリした!

作っているときから、
ずっと誰かに言いたかったんです(笑)。


「パーティー用に帯のイラストを変えては?」
というグッドアイデアを出してくれたのは、
デザイナーの森さんです。すばらしい!

森さんとは
今回初めてお仕事をさせていただきましたが

的確かつ洗練されたデザインワークが
あがってくるのが毎回楽しみでした。


その森さんこだわりの装丁は、
表紙カバーと帯ともに職人技が光る活版印刷!

デジタル印刷が当たり前の現代では
北海道どころか関東でも
B6版書籍のカバー・帯を刷ることができる機械がなく、

やっとのことで、元浅草にある
日光堂さんにたどりつくことができました。
(職人さんもご高齢で、
 いまは週に一度しか機械を動かさないそう)


「手を動かしているときが一番楽しい」という
五十嵐さんのエッセイ本を、

金版を作ってガチャコンガチャコンと
一枚一枚プレスする、
昔ながらの手作業でつくりあげていく。


校了直前に地震・大停電が起き、
綱渡りのスケジュールでしたが
(パーティーの2日前に納品されました!)

たどった道のりすべてが
「これでよかった」と思えるものでした。

プリンティングディレクターの檜垣清丸さんにも、
感謝、感謝です。


という過程を経て完成した本書ですので、

皆さんにも
ぜひお手にとってご覧いただきたいです。

見てください、この活版印刷のたたずまい!

ああ、これを見ながら
何杯でもワインが飲めそう(笑)。
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全部で144ページ。
幅1cmの背にも
きれいに印刷されているるるるるー。
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本というより「書物」という言葉が似合いそう。

手になじみがよく
静かな品格がにじみ出る紙は、
日本を代表する紙メーカー、
竹尾さんにご協力いただきました。
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あ、肝心の中味はですね(笑)。

インタビューを始める前に、
「ぼくの失敗談を楽しく話したい」と
明かしてくれた五十嵐さんの一言に
尽きると思います。

ご自分のキャリアを振り返るエッセイ本となると
通常は自慢話に終始してしまいそうなところを、

「ぼくはね、結構、失敗してきたんです」
と笑って、
いろいろなエピソードを話してくださいました。

五十嵐さんのものづくりヒストリーには

これからたくさんの失敗を経験するであろう
若い読者に届けたいことばや、
生きるためのヒントがいっぱい。


私もできるだけ、
五十嵐さんの輝かしいキャリア紹介ではなく

(そっちのほうは
 芸森の展覧会を見ていただければわかりますし、
 大変美しい作品集がスイスやイギリスの出版社から
 今年続けて出ているのです)

人生が思い通りにいかないときに、
どうふるまい、前に進んでいったか、という

迷いや決断、人との縁を中心に置きながら
お話をまとめていったつもりです。


構成は大きく二つに分けました。

第一章 動いて、会って、切りひらく
(生い立ちからデザイナー絶頂期までを
 綴りました)

第二章 子どものようにつくる
(彫刻家に転身、故郷の北海道に帰還。
 きびしくもやさしいものづくり論も)
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こうした、
とてもぜいたくなプロジェクトに
私が参加できたのも、
札幌のクリエイティブディレクター山岸正美さんの
後押しがあればこそ。

山岸さんは、私の「美」の師匠であり、
いつも楽しく美しい場所に私を導いてくれるのです。


五十嵐さんの名アシスタント、羽田麻子さんの
強力サポートも本当にありがたかったです!

ちょっと迷ったときはいつも
「そうだ麻子さんに相談しよう!」と思っていました。

細やかな情報編集、とっても勉強になりました。


デザイナーの森治樹さんとは、
先日のパーティーで初めてご対面。

あわただしいやりとりのなかでも
ちっともイヤな感じがしない(←これ大事!)
正確なレスポンスにどれだけ助けてもらったことか!

札幌・東京ですが、
また一緒にお仕事できるとうれしいです。


本書をAmazonや書店の一般流通にのせるために、
札幌の出版社、柏艪舎さんにお世話になりました。

限定部数や帯のバージョン違い、活版印刷など
こちらの細かいリクエストに応えてくださった
担当の山本哲平さん、ありがとうございました。

引き続きよろしくお願いします(笑)。


そして、昨年から幾度にもわたり
長時間のインタビューにおつきあいくださった
五十嵐威暢さん。

「美しい本」をつくる
仲間の輪に入れていただき、
本当にありがとうございました。

思い起こすと、
はじめてうかがう「失敗談」に
私が一番驚いて笑ってばかり。

とても美しい経験になりました。


『はじまりは、いつも楽しい
 デザイナー・彫刻家 五十嵐威暢のつくる日々』
構成・文 佐藤優子   1200円プラス税

10/13から発売予定。
ただいまAmazonでの予約が始まっています!


本書は限定部数ですので、
書店にまわる数は限られています。

できればお近くの書店でお取り寄せいただくか、
Amazonが確実かと。


札幌芸術の森で開かれている展覧会「五十嵐威暢の世界」

ミュージアムショップでも販売しています。

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展示会場には
「これも五十嵐さんのお仕事だったのか!」と
驚くような作品の数数が150点近く並んでいます。

ただ見つめていたい、
そんな空間に包まれる幸せを、
今年の秋、ぜひご堪能ください。

by miminibanana | 2018-10-07 14:53 | 仕事紹介 | Comments(0)