「北海道大学が紐解くテオ・ヤンセンの世界」レポート

7/17水曜。

2019年7月16日、北海道大学のCoSTEPさん
(コーステップと読みます)が主催する

第107回サイエンス・カフェ札幌
「北海道大学が紐解くテオ・ヤンセンの世界」

に行ってきました!
※会場内での撮影は、主催者側からOKが出ています。
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どんどん内容に入っていきたいので
CoSTEPやサイエンスカフェがなんたるかの説明は、
公式サイトをご覧ください。

一言でいうと、

私たち市民に「科学」を身近に感じさせてくれる
さまざまなイベントやプログラムを発信している北大の
コミュニケーションチーム、みたいな感じ。だと思う(笑)。


さて、現在、札幌芸術の森で、北海道初!
オランダのアーティスト、テオ・ヤンセンさんの
展覧会が開かれています。

札幌芸術の森美術館 テオ・ヤンセン展
会期:7/13土曜〜9/1日曜

昨日のサイエンスカフェは、その連動企画になります。


テオ・ヤンセンさんの代表作は、
上の画像にも写っている

「風を食べて動く生命体 
 ストランドビースト」


このネーミングからしてすでに
か っ っ っ こ い い … !


ストランドとは「砂浜」の意味で、
文字通り、オランダの海風が強い海岸砂丘で
風を動力にして自立歩行する作品です。

生き物でいう骨格や神経、筋肉、触覚にあたる
主な部分は、
プラスチックチューブで作られています。

私がストランドビーストを初めて見たとき
「な、なんだ、この生き物は…!」と
衝撃を受けたことを覚えています。

自分の見たこともない生命が
人の手でクリエーションされていることに、

そのすべてが有機的に連結されている動きに、

「知ってはいけない秘密を知ってしまった」ような、
ちょっと禁忌に似た感覚を覚えたことも事実です。


以下に続くこの投稿は、

まだ芸森に足を運んでいない私が
予習として楽しみにしていた昨日の会のレポートです。


会場はところどころ英語進行で
私は同時通訳のイヤホンを使いながら
目の前のテオさんのお話と通訳双方に耳を傾けていました。


誤解や聞き逃したところがあるかもしれませんが
私なりに「こうだったんじゃないか」という解釈で、
編集しています。


興味がある方、
下の「続きを読む」ボタンをクリック、プリーズ!








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この日の進行は2部に分かれており、
パート1は「環境をほどく」と題した、
テオさんと北大の先生とのトーク。

パート2は「生命をつむぐ」と題した
事前に参加者から募ったQ&Aのコーナーでした。


●「いつか私がいなくなっても
 ストランドビーストが生き抜いていけるように」

はじめにテオさんのプレゼンテーションが20分。

実際にストランドビーストが歩いている映像が
大スクリーンに映し出されると、
会場の空気が一瞬でがらりと変わり、

新しい生命の誕生を見るような、
ちょっと荘厳な気持ちにさえなりました。

もしかすると
赤ちゃんが生まれたばかりの親御さんが
このビーストを見ると、
いろんな感情が生まれるかもしれない。

そんな感じがします。

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テオさんは大学で物理学を専攻された方で、
ストランドビーストの動きは、コンピュータで
1500通りものアルゴリズムを解析して生まれたものだそうです。

主な原材料であるチューブは、
家庭用ケーブルにも使われるごく一般的な素材。


ここで早くも不確かな話をしちゃいますが、

このあとテオさんはストランドビーストの各パーツ、
生き物では「触覚」や「神経細胞」「脳」にあたる部分の
仕組みを解説してくれたのですが、

私が理解できたのは以下の3つ。

・ビーチといえば、もちろん海水があるわけですが
 ビーストには水を回避するシステムがある。

・テオさんが言うところの「うそつきのシステム」が重要。

 こちらがYESといえば、
 うそつきは次の人に「NO」と伝え、
 それを聞いた二人目のうそつきは「YES」と伝える…

 まるでデジタルの「0」と「1」の世界のように
 YESとNOを繰り返す仕組みで、恒久的に動く仕組み…
 いったいなにを言っているのでしょうわたしは…

・そうはいってもこんなに複雑な構造は
 突発的にさまざまな不具合が生じるので
 テオさんはつねに
 ストランドビーストのお世話をしないといけない。

「いつか私がいなくなったあとも、
 ストランドビーストが自力で生き残れるように」

 生命を創造してしまった人間の
 覚悟のようなものを感じました。



●過酷な海岸砂丘を生き抜く生命の共存関係
「ビーストは私、そして世界中の学生たちと共存している」

続いて、北大で景観生態学を研究している
松島 肇さんがマイクを持ちます。

・松島さんの主な研究対象は、海岸砂丘系

・潮風が強く過酷な環境下にある海岸砂丘には、
 これに適応した生き物や植物が
 相互依存の関係で生きている。

・現在の日本にはほとんど残っていない海岸砂丘。
 (開発や、観光地・レジャースポット化して
  荒らされ、ゴミの投げ捨て問題などが原因)

 その点、北海道石狩浜の存在はとても稀少。
 しかも札幌みたいな大都市の近くにあるなんて!

・海岸のアートといえば、砂に絵を描いたり、
 サンドウォームみたいな造形物もあるけれど、

 ストランドビーストは砂浜を生きぬき、そして進化している!

(ストランドビースト第一号が出来上がったのが1990年。
 以来、形や機能を変えて“進化”しているのです)
 
 この「厳しい環境をサバイブする」という
 強いメッセージ性に惹かれる、と語る松島さんは、

 ストランドビーストをきっかけに
 砂丘の危機を知ってもらいたい、と話していました。
 

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松島さんからテオさんに質問タイム。

ここもQ&Aを一気に凝縮しますと。

「ストランドビーストは他の生物と共存が可能か?」
という問いかけに対し、テオさんの回答は

「(先ほど触れた不具合のメンテを含め)
 ストランドビーストは私と共存関係にある。

 そして、世界中の学生とも」。


どうやら研究やワークショップを通して
世界中の学生が自分たちなりのアイデアで
ストランドビーストミニを作っているらしく
 
テオさんはそれを「繁殖」と言っていました。


「一度頭にビーストのことが取り憑くと、
 考えずにはいられなくなる
 ストランドビースト病(Strand Beast Disease)にかかってしまうんだ」

なんていうおちゃめな発言も飛び出したりして!

(テオさんはこのあとでも、
 ストランドビーストを動かす風のことを、

 「友人であり、ときには敵にもなる。
  まあ、結婚生活のようなもので、
  乗り越えなきゃいけないときもある」

 とおっしゃってました笑)


「ストランドビースト病」の
一番の重症患者であるテオさんにとって
それは俗にいう“幸せな病”なのだと思います。

ここでパート1を終わりにします。


●海岸で幾多の失望と向き合い謙虚な人間に
「この世界はミラクルに満ちている」

パート2は参加者からの質問タイム。

事前に募ったようですが、スクリーンに
質問内容が日本語&英語で表示されて

さらにその場でご本人に立って質問してもらう、という
ちょっと丁寧すぎるくらい丁寧なやり方。


質問)長時間かけて進化してきたストランドビーストが
テオさんに与えた影響は?(すごくいい質問!)

テオさんの答え)

最初のストランドビーストが出来たのは1990年。
初めは仰向けになってただ足を動かすだけ。

当時の私は謙虚な人間ではありませんでしたが、

この第一号誕生以降、
海岸での幾多の失敗、失望と向き合って謙虚さを
身につけてきたと思います。

海岸で作業をしていると、
この世界はなんてミラクルにあふれているんだと
理解できる瞬間がある。

私たちは自分が特別な生命体であること、
生命が驚きに満ちているということを忘れがちですが

ビーストを見ていると、それが実感できる。

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高校生からの質問)テオさんは高校時代に何に夢中でしたか?
(これもいい質問!)

テオさんの回答)

高校時代はめだつタイプじゃなかったんです。

飛ぶことが好きでパイロットになりたかったけど、
あいにく視力が悪かったのでそれが叶わなくて

大学では物理学を専攻しました。

でも当時、世界はヒッピーの時代でしたから
(あまり勉強しないで)絵ばかり描いていた。

それはダメですよね(笑)。結婚生活もbrokenに。

そこからアーチストになり、
ストランドビースト病にかかっちゃう。


(私が素晴らしいと思ったのはここからです!)

人生にはもちろん人生設計(Plan)が必要ですが、
でもそれがうまくいかなかったときの柔軟性も大切。

若いひとにはぜひそのことを意識してもらいたい。

自分自身が幸せになるように自分の心に従って。


……うーん、これは30年近く、海岸で
気まぐれな海風と向き合ってきたテオさんならではの
慧眼ですよね。

思い通りにならないことに絶望しない。

Optimism(楽観主義)ということを、
何度も口に出しておられました。

彼は幸せな「ストランドビースト病患者」ですから

「仕事をしているフリをしているけれど、
 自分にとって人生は大きなホリディのようなもの」

ともおっしゃっていました。この境地…!


●「科学者か?芸術家か?」の問いに
 「私はエスキモーです」

このレポートは時系列どおりではなく、
内容が近かったり、重複したりしたものを
編集して書いています。


科学と一般社会の距離を縮めることを目的としている
北大CoSTEPさんにとって
ことさら嬉しかった質問はこちらではないでしょうか。

質問)科学と芸術の似ている点、異なる点は?

テオさんの回答)
「科学」と「芸術」というのは、
(社会がつけた便宜上の)ラベルのようなもの。

私がエスキモーの生活にとても惹かれるのは、

彼らはカヤックや家づくりにおいては科学者であり、
彫刻などの手仕事では芸術家でもあるから。

だから私も
「あなたは一体どちらなんですか?」と聞かれるといつも
「エスキモーです」と答えるようにしています。


…なるほど。社会や大学のラベルに
自分の夢や可能性を閉じ込めなくてもいい、というお話でした。


最後にもうひとつだけ。

「ビーストの仕組みや理念を一般社会に応用するとしたら?」
という質問には、

風力発電や農業への活用の可能性があることを示唆し、

「それを実現するのは皆さんです」と呼びかけたテオさん。


「世界はダイナミックなバランスで成り立っている。
 皆さんの肩にもそのバランスの一端がのっている。
 ぜひ、世界へ飛び出して」とうったえ、

会場中から大きな拍手をもらっていました。


北海道で初めてとなる
札幌芸術の森美術館 テオ・ヤンセン展 は

2019年9月1日日曜まで好評開催中!


日本初公開5点を含む12点の展示と、

期間中毎朝10時から1時間おきに
実際にビーストを動かす
デモンストレーションもあるようです!

(もちろん当日の天候や状況によるそう。15分程度)

私も平日を狙って、
ぜっっっったい観に行きます!


以上、北海道大学のCoSTEPが主催する

第107回サイエンス・カフェ札幌
「北海道大学が紐解くテオ・ヤンセンの世界」

佐藤優子の私的レポートでした。


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ご協力いただいた関係者の皆様、
本当にありがとうございました。

by miminibanana | 2019-07-17 12:28 | レポート | Comments(0)