町田康『ギケイキ』感想
脱走おしまい。原稿サンデーでーす。
昨日、町田康の『ギケイキ』を読み終わりました。
なんだー、まだ雑誌『文藝』で連載中だったんですねー。
ギケイキ、すなわち「義経記」ですので、
源氏の御曹司である義経が
保護を求めていた東北・藤原氏のもとを出て
いよいよ、頼朝と合流する直前で物語が終わってしまった。
すでにあちこちの書評で出ていますが、
この本の鍵は「文体」です。
修行のうえに体得した「早業」で、
幾多の危機を「ぶっつぶして」きた義経らしく、
文体もスピーディーな
(しかも死んだ本人による)現代口語調。
「燃やす。すべてを燃やし尽くす。
これは後年の私の主要な戦術のひとつとなる。
このとき私は、またひとつ、アイテムをゲットしたのだ。」とか
「それがわかったとき、私は腹の底、心の底から、
あああっ、面倒くせー。と思った」なんていう文章が
次から次に繰り出されて、読者をボッコボコにする。
死者に語らせている時点ですごいですけれども、
「いてこます」とか「マジですか」も当たり前に出てくる。
町田康、やりおった。という感じです。
すでに義経の末路を知っている現代人の身としては
哀しいお話は読みたくない、という気持ちと、
町田流義経がそれをどう咀嚼して、自分語りするのか
見てみたいという気持ちも強い。
続きが出るまで、ちょっと忘れたフリをしていようと思います。
by miminibanana | 2016-07-24 11:09 | 世間話 | Comments(0)