札幌国際短編映画祭2015感想まとめ

10/18日曜。

「レポート」カテゴリに2015年10/7水曜〜10/12月曜の
「札幌国際短編映画祭2015」感想レポートを追加します。

この映画祭は、長くても30分前後の短編=ショートフィルムに
特化した国際映画祭。

東京で俳優の別所哲也さんが始めた
アメリカン・ショートショートフィルム・フェスティバルの
札幌ブランチだった団体が、現実行委員会の前身です。

今年は札幌市が提携し、国際映画祭に進化してから10周年。
メモリアルイヤーということで、
私もがんばって上映期間中全日程、参加してきましたYO!
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上左は映画祭のパンフレット、
右は25本のプログラム券が綴じてあるVIPチケットです。

下は詳しい上映スケジュールが書いてある小冊子で、
これを毎日常備しながら劇場に向かっていました。

1本のプログラム中5〜7本の短編が入っており、
私が見たのは無料プログラムも含め【合計18プログラム】。

上映された短編は133本ですが、
正直に申し上げますと「寝ちゃった…」のもあるので
【正味122本の短編】を見尽くしました。


以下、毎日Facebookにアップしていた
各プログラムの感想をまとめました。

アホみたいに長いのでいったんたたみますが、
アーカイブとして残しとこー。







●I-A「ほのぼの」
もし私がプログラムタイトルをつけるとしたら
「心によぎる想い」とかなんとか…かなぁ。
ほのぼのだけじゃない感情を含んだ7本立て。

・5本目の「カウボーイズ」
映画「セッション」の鬼教官ばりのおっちゃんがいつ、
あのキュートな坊やに復讐するのかとドキドキしながら
見てました。ち が っ た 。
・最後の「ミセス・アルベルティーヌ」
すばらしい。81歳のおばあちゃんが主人公。
彼女は本当に役者さんなのかしら。まるで「実在の人物」のよう。
こういう映画を撮ろうと思う監督の成熟度に感心する。


●I-B「人間模様」
ショートフィルムでこういうことができますよ、という
見本市のようなプログラム。
・1本目の「1人8カメ」
タイトルがすべてを語っていますが
こういう落ち着きのないひとっているな、と思いました。
・2本目の「ザ・別れ」も
こういうタフなオンナっている、と思いました。
・4本目「ザ・フライ」一人芝居、うまい。うまいわ。
コリン・ファース主演の『フォーンブース』を思い出す。
・5本目「溺境」かなりの完成度。子役、大活躍。
彼らの成長後も描いたらWOWOWドラマで全5話くらいになりそう。
・6本目「ウェイワード」
原題waywardは言うことをきかないとか、強情である、の意味。
怒れるティーン。
私、この作品は今年のベスト3に入れます。
・7本目「真実の父」
よく人生は交差点にたとえられますが、
主人公がタクシー運転手であるところが悲しく腑に落ちる。
「真実の父」は最優秀脚本賞を受賞しました。確かに。

うーん、振り返ってみるとI-B、おもしろい。かなりのレベル。


●I-C「エンターテインメント」
これは鉄板。初めてショートフィルムを観る方は
このプログラムから始めてみては?
・2本目の「剣の舞のダリ」実話だって本当?
・3本目「デ・スメット」シュール。
・4本目「エイデン」やだ、すごい。パイロット版かも?
・5本目 The Way You Die 最高、最高、最高!
これね、007シリーズのパロディ作品です。愛情たっぷり。
オープニングからして必見。もいっかい観たい。


●I-D「世界の今」
これも私がプログラムタイトルをつけるとしたら「戦火の地球」。
でもそれじゃお客さんが入らないから
「世界の今」でいいんだと思う(笑)。

や、でも世界のこういうことに目をそらしてはいけない。
ゲスト審査員の大林監督が絶賛してた!
というのにも納得の6本です。

・3本目の「チキン」子どもが出てくるんですが
監督はどうやって撮影したんだろう。
是枝さん的なセミドキュメント風に?
あれはもう、演技じゃない。心臓がバクバクしました。

この作品は今回の作品部門グランプリを受賞。
最優秀子役賞、札幌市平和賞も受賞しています。納得。


●I-E「ポートレート」
・3本目「ママが幸せなら、みんなハッピー!」
すばらしいドキュメント。なんと魅力的な女系家族か。
今回の最優秀ドキュメンタリー賞受賞。パチパチパチパチ。

・4本目「えさ」4分強の短編アニメ。オチに「わははー」
最優秀ミニショート賞受賞。

・5本目 すごくステキなセリフがあります。
ああいうことをいえる大人を増やすことが
平和な世界につながると思う。

・6本目「自転車」インドは子役がずば抜けてかわいい。
これは男性もハンカチをお手にご覧ください。
女性はウォータープルーフのメイクでお出かけを。
こちらも最優秀子役賞を受賞。

・7本目「私のハートはあなただけ」
「自転車」の余韻を吹き飛ばすチカラあり。
映画のテーマカラーは「赤」です。
愛の、情熱の、心臓の色。

このI-Eのプログラムタイトルを私が(勝手に)
つけるとしたら「私をつくるもの」かも。
What I consist of  
自分という人間がなにからできているのかを
考えさせる7本でした。


●I-G「ユニーク」
このユニークは「面白い」ではなく「独特」の意味。
映画祭で気をつけたいのは2階と地下の会場では
上映時間が異なることです。
上は奇数時間(13:00〜/15:00〜)スタート。
下は偶数時間(12:00〜/14:00〜)スタート。

なので、もし上下で2本はしごをする場合は
どっちかを途中で出て、上か下かに移る必要があります。

私は地下で「アードマンアニメ」が観たかったので
このI-Gは5本中3本で退出。
ちょっともったいないですが(笑)
こういう見方ができるのも短編ならでは、です。

・3本目の「プラネットシグマ」
モキュメンタリーという手法らしく、
ドキュメンタリー風のフィクション。つくりごと。
BBC系のネイチャー番組が好き、という方は
喜んでだまされにいきましょう。


●N-A「国内作品A」N=Natinalね。
・1本目「オール・フォー・シネマ」安藤政信主演。
WOWOWの企画から生まれた1本で、
斎藤工と板谷由香が製作総監督。
・2本目「まなざし」2時間ドラマ分の内容を21分にぎゅっ。
母親役石田えり、さすがの名演技。酸いも甘いも。
娘役池端レイさん、名前覚えとこ。期待、期待。
それにしても美人親子だ。

・6本目「オールーシー!」N-Aの目玉は間違いなくこれ。
主演、桃井かおり。
未見ですが「嫌われ松子」のような展開かも?

カラオケ店でのルーシー、いや、桃井さんの毒はすごいですよ。
黒いなんて単色じゃない、すべての色を混ぜてつくった黒。
この黒さを出せるのはやっぱり桃井ねーさんですよ。
なのにお肌ふっくらSK-II。脱帽です。

愛おしさとイタさとバカバカしさと
苦い希望に包まれて人生は続く。


●N-B N=National 国内作品だけを集めたプログラム
寺島しのぶ&寺島進共演作品と、
福島慎之介(失礼ながら無名の役者さん?)&
山口馬木也(時代劇や舞台で活躍)出演作品。
プロが出ているこの2作品で
学生監督作品、ご当地映画、学生制作作品の3つをサンドイッチ。

ダブル寺島作品は監督がクリストフ・サニャという
フランス人。きっと「たけし映画」好き。わかる。

山口馬木也さんらが出ている作品「小春日和」は
最優秀国内作品賞を受賞しました。


●N-C National=国内作品のCプログラム
・1本目「ソシオパス」驚きの展開。スタッフに白組。
・2本目「100年の謝罪」
時間の進め方を表現するのがうまい。
紙芝居、テレビ番組、選挙演説。
・3本目「し」
特殊メイクにアイソケイスケさんとあったけど
知人のお兄さんとみた。あとで確かめたらそうでした。
・4本目「バベルオン」大昔のことです。
「バベルの塔」を積み上げて天の高みを目指そうとする
人間たちに神様が怒って、塔を壊しちゃったんですね。
そのとき「人間同士が二度と協力できないように」と
言葉もバラバラにしちゃったんです。神様かしこい。
…という背景が、他言語を扱うこの作品のタイトルにこめられています。

・5本目「七五郎沢の狐」価値ある1本。心に刻まれます。
・6本目「OCTOPUS」
我修院達也と堀部圭亮が出てる時点でもう「笑」。
これを見て私の映画祭最終日が幕を下ろしました。
最後はタコの物語。
帰り、デパ地下でタコのマリネを買いました。


●F-A F=Filmmaker すなわち監督さんを特集したプログラム。
Fプログラムは他に「F-B」もありますが、
こちらのAはスイスのラファエル・ボリガーさんと
イランのオミッド・アブドラヒさんを特集。

スイスのボリガー監督の作品には、なんと、
「ブレードランナー」のルドガー・ハウアー出演作がある!

短編映画にはたまにこういう驚きがひそんでいて、
大物たちが惜しげもなく
若い才能とタッグを組んでいるところがいいのです。

イランのアブドラヒ監督は、BGMをいっさい使わないのが特徴。
日常を切り取った作風で、淡く静かに画面が進みます。
3本目の「Hostess」、
もし私がひとの親だったらヒリヒリと泣いている。
昔自分が親にしたことを思い出しました…。


●F-B フィルムメーカー=監督特集のBプログラム。
オランダのロスト監督、
どうやら有名なアニメスタジオの創設者らしい。

ちょっと、いや、かなりゴシックなタッチで
架空のバンドのミュージックビデオをシリーズで作っている。

もうひとりは、スイスのピーター・フォルカート監督。
ずいぶん色が渋めなアンダートーンの世界。
こちらは実写で
「ここではないどこか」に思い入れがあるようです。

お二人3本ずつ上映されましたが、
…告白しましょう。 寝 ちゃ っ た 。
連日の「観疲れ」がピークに達して
会場が暗くなると同時に寝ちゃいました…。
ほとんどなにも覚えていないので映画評は書けず。

監督さんお2人とも来場されていたので
なおさら申し訳なかったなー。


●ファミリー&チルドレン
ちびっこ大歓迎のアニメーションプログラムで毎年人気ですが、
今年はものすごくレベルが高かった!
ちびっこが飽きないよう5分前後の作品が多く、
全部で14本という本数もオトクです(笑)。

・4本目の「シングルライフ」アイデアgood!
・5本目の「バウンド・ドッグ」
飼い主さんが異様に疲れているのが笑えました。がんばれ、ワンこ。

・6本目の「グンター」最高、最高!なにこの世界?会場中が大笑い。
これが最優秀チルドレン賞を受賞したと聞いて、うれしーーー。

・7本目「ワン、ツー、スリー」名作絵本に匹敵する感動と微笑み。
オチも「うん、そうなるよね」という微笑ましさ。
・13本目「プレゼント」こういうテーマはすごく大事だと思う。

なお、このプログラムは赤ちゃん(とママ)に配慮して
照明を少し明るくして上映しています。
なので途中入場もしやすく、実行委員長の山岸さんが
「赤ちゃんが泣くかもしれませんが
 どうぞ皆さん、あたたかく見守っていただければ」と
アナウンスする姿もとても素敵でした。

赤ん坊、泣くのが仕事ですものね。


●「アジアンタイフーン」この映画祭独自のアジア短編特集。
こちらもこのプログラムができて今年で10周年。

韓国、台湾、中国、インド、シンガポールの
アジア作品5本をラインナップ。

・台湾作品、子役がすごい!
いますよ、こういうコ、いる、生きている。
・中国のひねりのきいたドキュメンタリー、
「食」は世界の共通語。
・韓国作品「アクトレス」は実在する韓国の大女優
ムン・ソリさんのムン・ソリさんによる
ムン・ソリさんを通した「女優業」パロディー。

初監督、脚本、主演の大活躍で、
画面にどっしりとした落ち着きがあり説得力もある。
桃井かおりが好きなひとは
きっとムン・ソリさんも好きだと思います。

多様性に満ちたアジアの5本でした。


●「カリフォルニアショート」
こちらは札幌よりも歴史が長い
カリフォルニアの映画祭からのプログラム。
一番驚いたことは、
白人の?白人による?白人のため?の8本だったこと。

テーマは普遍的なことを取り扱っていましたが、
出てくる主要人物がオール“白いひとたち”。

もちろんインド映画特集なら出てくるのは皆インド人でしょうが、
アメリカというお国柄を考えると、なんだかとても意外でした。
そういうもの?

・2作目 ナレーションの「声」に登場人物が操られる西部劇。
このアイデアは確かにありだなー。
・3作目「オーケストラ」アニメーション。大 好 き 。
ひとには皆、自分とそっくりの小さな楽団(人数や楽器は異なる)
がいて、そのひとの喜怒哀楽を音楽で彩ってくれる、
という設定にドキュンとやられました。
よくこんなこと、考えついたなあ!ステキすぎるー。
もしかしたら私にもそんな楽団がいるのかしらん。
見ることができてよかったと思える秀作でした。

・5作目 脚本家vsプロデューサー
タフなほうが一枚上手。本当にありそうな話で笑えました。

総じて、作っているひとたちがいっぱい
映画を観ていることが伝わってくる
“映画の国”アメリカらしい、質の高い8本でした。



以下は今年だけの特別プログラム4本です。

●アードマン・アニメーションズ
「アードマン」とは、イギリスのアニメスタジオのこと。
代表作はクレイアニメ「ひつじのショーン」。大好き!
とはいえ、このプログラムは
クレイアニメだけの特集ではありません。
アードマンが手がけたミュージックビデオや
(イギリス人ミュージシャンのピーター・ガブリエル)
影絵、手描きなどいろんな表現のアニメが楽しめます。

イギリスはモンティ・パイソンを輩出した国ですから
すべての根っこにブラックジョーク、というか
ものごとを冷静にとらえる批評性があるんですね。

アードマンも、それは例外ではありません。

クレイアニメ=かわいい〜 だけでなく、
(むしろ「かわいい〜」作品ってあったかな、くらい)
痛烈な風刺(動物園もの)あり
オバカネタ(影絵とかアングリーキッズ、紫と茶色の口笛)
ディズニーが配給?の「海賊番組」
(このクレイアニメは声優さんが豪華。
元祖イギリス人イケメン俳優ヒュー・グラントや
「シャーロック」のワトソン役マーティン・フリーマン、
「ドクターフー」10代目のディヴィッド・テナント)
もちろん「ひつじのショーン」も入っています。

そうそうたる19本の中で
私が一番好きだったのは海岸の姉妹の物語。
ダークファンタジーの王様ティム・バートンを彷彿とさせる
姉妹のおはなし。ねえちゃん、ゲキ渋だったなぁ。


●「ベストアニメ」
過去にこの映画祭で上映された名作アニメ特集。
いやあ、まさに傑作につぐ傑作。
・2本目の「夏と冬の間に」美しかった…(ため息)。
絵本作家・酒井駒子さんの世界観にも通じる切なさと愛おしさ。
・3本目「ヴァーミンツ」と4本目「ダム・キーパー」
世界の汚染を描くときはつねに「空気」が汚される。
そして「なにかを守ろうとするもの」に希望が託される。
・5本目「まいごのペンギン」ああ、また見れてよかった!
ペンギンの歩き方や動作が、反則級のかわいらしさ。
なにより自分で考えて自分で行動する男の子が最高にカッコイイ!
ペンギンにも親にも甘えないの。カッケー。


●「ブランデッドフィルム特集」は入場無料の特別プログラム。
これ、来年もあればいい!
すごくためになったし、楽しかったー。

YouTube時代になり、企業CFのありようが変わりましたよね。
サントリーCCレモンの「忍者女子高生」や
KAGOME×明和電機の「ウェラブルトマト」(爆笑!)を
YouTubeでご覧になったことがある方も多いのでは。

トヨタのスポーツカーアクアG'sは野球好きの心をつかみ、
九州の安川電機の創立百周年画像、居合い抜き名人×ロボットの
ラストには熱い感動すら覚えます。

「商品を不特定多数に宣伝する30秒以内のCM」から
「少数派でも観る人を確実に楽しませる60秒以上」の
《ブランデッドフィルム》の時代がやってきた。

この特別プログラムには、
《ブランデッドフィルム》という言葉をつくったお二人、
映像制作会社「P.I.C.S(ピクス)」の寺井弘典さんと
専門誌「コマーシャルフォト」編集長の川本康さんが登場。

時代をあらわしている作品を紹介しながら
SNSとの親和性(=何万回再生か測定しやすい)や
高校生たちがすぐに作り手になれる環境について
お話してくださいました。

そして最後はサントリー ペプシ ストロング ゼロの
「桃太郎 Episode3」4分バージョンをスクリーンで上映。
大画面で観るとあの世界観が倍増されて鳥肌モノ!
普通の高校生たちがバカッコイイ作品をつくる一方で
プロの人たちがマジでつくると超絶カッコイイものが完成する。
シビれましたね。鳥の国のものがたり。


●「SSFF」とは札幌の協力映画祭である
ショートショートフィルムフェスティバル(東京)
=俳優の別所哲也さんが始めた映画祭が
札幌の10周年を記念して組んでくれた特別プログラム。

札幌のお祝いだからでしょう、
フランス人のアカデミー賞受賞男優
ジャン・デュジャルダン(「アーチスト」)の作品や
カンヌで短編映画賞をとった韓国映画「葬式」、
平田満、渡辺大出演の「しゃぶしゃぶスピリット」と
きらびやかな作品がずらり。東京っぽい(笑)構成でした。


以上、私が見た【全18プログラム122本】でした。


自分の思い出にのためにも、ここにまとめときますね。
最近めっきり思い出せなくなってきたから!

by miminibanana | 2015-10-18 15:07 | レポート | Comments(0)