「狸小路TV」トークと小冊子がすごい!

8月21日月曜。

昨日行ってきたトークイベントを紹介します。


札幌国際芸術祭関連企画の「狸小路TV」とは、

後世のテレビ番組制作者たちに多大なる影響を与えた
1960年〜1970年代のテレビ番組を

アート=表現という枠組みで検証し直し、

「普遍的」あるいは「その時代特有」の
魅力や制作アイデアの源泉を
再発見しようという企画です。


映画でもラジオでもなく、
「テレビ」が映してきたことってなんだろう?

伝えようとしてきたことって?


その問いかけについて話し合うために
来道してくださったビッグゲストが、

「情熱大陸」や「サラメシ」「世界ふしぎ発見!」などを
作っている映像制作会社テレビマンユニオンの
創立者の一人である今野勉さん。

業界では“レジェンド”のような存在です。

テレビマンユニオン


プラス、
札幌で60年代70年代に意欲的な番組を作ってこられた
ディレクターや現役の制作者たちが集う場が、

「狸小路TV」の企画として
8月から9月にかけて用意されています。

詳細は、以下の「狸小路TVサイト」をご覧ください!


さて、私が昨日行ったのは、
そんな上映&トークイベントの皮切り!

テーマは
「根源的なTV表現を再発見する」でした。


下のトーク風景、

左から「狸小路TV」発起人のひとりであり、
司会のシアターキノ中島洋さん。

現代美術としてテレビをとらえ、
「その理想的な制作者」として今野勉さんのことを研究している
情報科学芸術大学院大学[IAMAS]准教授の松井茂先生、

北海道文化放送プロデューサーの後藤一也さん、

そして右端が、テレビマンユニオン最高顧問の今野勉さんです。
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6時間を超える長丁場のイベントでしたが、

いやーーーーーーーー

今野さんが作った上映4作品がすばらしかった!

震 え る ほ ど 
す ば ら し か っ た ん で す !


当時のテレビ番組でビデオで撮ったものは
次々と上書きされ、
ほとんど残っていないという
衝撃の事実にも驚きましたが、

フィルムで撮ったこの4作品が
こうして現代でも上映されて本当によかった!

心の底からそう思いました。


作品をざっくり紹介しますと、

当時、日本に入ってきたばかりの「精神分析」と
「日本人にとって
 最大の《記憶喪失》案件である沖縄問題」、

そして1964年の東京オリンピックが、
こよりのようによじりあう
サスペンスタッチのドラマ『土曜と月曜の間』。


刑事たちがまっったく活躍しない、むしろ、
従来の刑事ドラマ=人情モノでは解決しようがない
若者たちのヒリヒリするような心情を扱った
『七人の刑事~ふたりだけの銀座』

いまでは考えられないような迫真の銀座ロケ!

カメラ何台で、一体どうやって撮ったのか…。

役者たちのロケならではの緊張感が、
筋書き以上の「取り返しのつかなさ」を
醸し出している感じがしました。


それから後半のドキュメンタリー2本は、

虚実が入り乱れて視聴者を煙に巻くような
トリッキーな作りと
私が好きな伊丹十三のキレッキレの知性が炸裂する
『遠くへ行きたい~伊丹十三の天が近い村』
『天皇の世紀 最終回〈絶筆〉』


この4本を観れたことが、
ホントに貴重な体験となりました!


特に後者の2本!

幼稚園児顔負けの遊び心と、
取材される側をも巻き込んだ
手間ひまと熱量に脱帽です。


制作年は、伊丹が40代前後のとき。

彼は一時期テレビマンユニオンに参加しており、
51歳のとき、
『お葬式』で映画監督デビューを果たします。

51歳だったんだ!


彼の映像制作の下敷きは、
このテレビマンユニオン時代にありました。

うーん、納得。

こんなに挑戦的なことを
すでにテレビでしていたのかー。


繰り返しますが、このあとも
「狸小路TV」企画の上映&トークイベントは続きます。

ぜひ、サイトをチェックして

あの時代の作品を観る&当事者から解説を聞く
という、かけがえのない機会を
楽しんでいただければ、と思います。



また、この「狸小路TV」企画のひとつとして
特別冊子を作っています。

札幌国際芸術祭2017のテーマ
「芸術祭ってなんだ?」にかけた冊子名は

「北海道発テレビ表現ってなんだ?」です。

(冊子名は、キノ中島さんのナイスアイデアでした!)
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前述の今野勉さん、

その今野さんの表現力&足跡を研究している松井先生

(トップバッターである松井先生の原稿を読むと、
 今野さんがどういう立ち位置の人か理解できます)

元HBCの敏腕ディレクターだった長沼修さん、

そして、実は「東芝日曜劇場」で流れた
HBC制作の番組を見て育ったという
是枝裕和監督が、

書き下ろしの原稿を寄稿してくださり、

巻末には、北海道のテレビ史が
ジャンルごとに網羅されている
貴重なアーカイブ「テレビが描いた北海道」も

(エイチ・テー・ビー映像株式会社
 代表取締役 上杉一紀さんが監修)

掲載されています。

私は編集を担当させていただきました。
デザインは、門間友佑さんです。


今野さんの原稿は手書きで送られてきました。
力強い筆跡だった…。
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長沼さんの原稿、

現実の札幌オリンピックとドラマがリンクしていた
当時のエピソードに釘付けになりました。
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いまや日本を代表する是枝監督ですが、
その根っこに「東芝日曜劇場」があったとは!
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この特別冊子「北海道発テレビ表現ってなんだ?」は
限定部数印刷でして

狸小路TVの上映&トークに行くと、
もらえます(笑)。

とくに映像制作に関わる人は、ぜひ入手してほしい!


札幌国際芸術祭関連企画「狸小路TV」、
日替りでおもしろイベントも目白押しです。

よろしくお願いしまーーーーーす!

by miminibanana | 2017-08-21 17:35 | レポート | Comments(0)