スクリーンで観る『秋刀魚の味』

10/31月曜。おお、寒い。

昨日、札幌映画サークルさんが主催した

「日本映画名作祭2016 
 小津安二郎監督特集 
 カラー作品デジタルリマスター版」に行き、

あの名作『秋刀魚の味』を生まれて初めて
スクリーンで観てきました。
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いやー、やっぱり映画はスクリーンですね!

WOWOWで観たことはありましたが、
面白さが格段に違う! 

小津が偏愛した「赤」の配置も
はっきりとわかりました。

1962年に公開された『秋刀魚の味』は小津の遺作です。

小津は生涯独身を貫き、
ずっと二人で暮らしていた母親を本作の撮影中に亡くし、
「酒量も増えた」小津の心境が反映されているのでしょう、

まあ、劇中の9割近くが「呑んでいる」場面ばかり。
(伊丹映画と違って食べもののアップがない)

食欲旺盛に食べているのは、
若い部下役の「三浦」くんばかりで

あとの笠智衆演じる50代の主人公たち
(中学を出て40年経っている世代)は、

日本酒を、トリスウヰスキーを
ひたすら呑む、呑む、呑む。

おいしいから呑むんじゃなくて
なんというか、会話のつまみに呑む感じ。

経済的な豊かさを表しているようで、
その実、ちょっと空虚な雰囲気も感じました。


出世街道にのった裕福な教え子たちに対し、

東野英治郎演じるかつての恩師は、
経済的な困窮にあえぐ孤独な老境に入っている。

同じ「母親を亡くし、父の面倒を見る役」として、

笠智衆の娘を、
24歳でまぶしい美貌を放つ岩下志麻が演じ、

東野英治郎の娘に、
おそろしくて年齢も聞けないほどくたびれきって、
恨みがましい空気をまとった杉村春子を配置する。

実に残酷な対比でした。


もうひとつ、スクリーンで観てわかったことは、
実に「ぼんくらな会話」が多いこと。

「やるかい?」
「やるさ」
「本当にやるかい?」
「やるったら」的な小津流催眠術のような会話や、

自分のことしか考えていない男家族(父親、兄)に
淡い恋心をだいなしにされたショックを
気づかれまいとして居間を去る娘に

兄「もっと泣くかと思ったら」
父「案外平気な顔をしとった」と微笑むぼんくらな二人。

そこに弟がきて
「どうしたんだい?姉さん、泣いてたみたいだ」。


観ているこっちがビックリするほど、
ぼんくらな会話ばっかりでしたわ! 


それに対して、
ズバズバと鋭いマシンガントークで
天下の二枚目、佐田啓二をいじめていたのは、
これまた美しい岡田茉莉子でした。

ちょっと言い過ぎじゃないの?とも思いましたが、

「うるさいっ」しか言い返せない夫の姿に、
普遍的な夫婦像を見た気がします(笑)。


こういうこまごまとしたことも
テレビサイズでは、
受け取る感性ごと小さくなってしまい、

せっかくの映画の魅力を
半分も理解していなかったことに気づかされた上映会でした。


小津映画のデジタルリマスター版上映なんていう
貴重な場を企画してくれた札幌映画サークルさんに、
心から感謝の気持ちをお伝えしたいです。

YKRさん、いつも貴重な情報をありがとうございます。

やっぱり「映画はスクリーンで」ですね!

by miminibanana | 2016-10-31 16:42 | 世間話 | Comments(0)